今日のラノベ!

最強秘匿の英雄教師

最強秘匿の英雄教師

著者:
左和ゆうすけ

イラスト:
霜月えいと

レーベル:
講談社ラノベ文庫


【あらすじ】

何処かより現れ、人々に害をなす漆黒の悪魔―デモニア。その悪魔の力を用いてデモニアと戦うのが、劔氣士と呼ばれる存在だ。かつて最強の英雄として讃えられていた劔氣士ラッシュ・ブレードは、敵に操られたことにより、突如人類を裏切り、多くの貴重な劔氣士を葬って多大な被害をもたらした。人類最強の英雄にして、人間に仇なした忌まわしき存在となってしまったラッシュ。そんな彼に唯一提示された、罪を償う方法―それは、名前と姿を変え、学校の教師になることだった。そしてラッシュは、命を賭して彼を救ったかつての恋人の妹ミユキとともに、劔氣士養成学校に向かう。だが、そこで出会った生徒たちは、みな一癖も二癖もある存在で…!?




感想:★★★★★

奥深さ、想定以上。
今のところ、今年一番面白かったです。
”面白い”だとちょっと違うか…。
今年一番心を揺さぶられました。



本当に240p程度だったのかと言いたくなるくらい、見所が多いです。


まず、主人公ラッシュの成長。
戦場で人が死ぬのは当たり前だという考えがその強さ故に根強く、自らの恋人を戦場で失っても涙を流すことができていなかったラッシュが、教師として未熟な子供たちと触れ合うことで徐々に普通の人間らしい感性を得ていき……。


「プロローグ前の悲劇」と「エピローグ前の悲劇」に対するラッシュの反応の差が、この物語におけるラッシュの成長なのかな、と思います。

物語の最初と最後を同じ場所、同じ人物、同じ話で比較してくる技に滅法弱いdeskyzerです…




次に、教え子たちの成長。
劔氣士(ウォルフ)としての成長よりも、精神的な成長のほうが大きかったのかな。
特にコトミ、ジェイク、イマリの3人。

「教師に必要なのは完璧な授業運営じゃなくて、子供たちのことを第一に考える心」

就活で教育系の企業様から聞いた話をふと思い出しました。
ラッシュの授業はとても質が良いと(一般的な尺度から見たら)言えるものでは無かったけど、一人一人と向き合って真剣に考えていたから、ああいう成長ができたのかなぁ、と思いました。



そして、”教育”の本質。
本文中には繰り返し、「教育は先行投資」というような表現が出てきます。
「教育体制を整えました⇒人が成長しました」の矢印の部分には多少なりともタイムラグがあり、効果がすぐ現れるわけでは無いんですよね。

とある聡明な王はそれに気づき早いうちから教育を進めていたのに、肝心のタイムラグの部分を見誤っていました。
それは王が王たるために起こる、悲劇的な不調和でした。
こと戦場において、希望などは無く、奇跡など起こりえない。

端的に言って、もういやだ……




嫌だけど……逆に「ラッシュの教え子は全員大活躍してみんなハッピー!」な終わり方してたら思いっきり低評価叩きつけるのは目に見えてますよね。

教育は先行投資。
すぐに効果が現れるものではない。
だから、教育し続けなければならない。

いつの日か、デモニアを駆逐する…その日まで。





教育って虚しいね……



以上!

最強秘匿の英雄教師 (講談社ラノベ文庫)
左和 ゆうすけ
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