どもー。
デスカイザーです。



幸せを態度で示すと言われ、パンパンと手を叩くのはなぜなのか。
童謡って奥が深い…。



今日のラノベ!

賭博師は祈らない

電撃文庫より
『賭博師は祈らない』です。


【あらすじ】

十八世紀末、ロンドン。賭場での失敗から、手に余る大金を得てしまった若き賭博師ラザルスが、仕方なく購入させられた商品。―それは、奴隷の少女だった。喉を焼かれ声を失い、感情を失い、どんな扱いを受けようが決して逆らうことなく、主人の性的な欲求を満たすためだけに調教された少女リーラ。そんなリーラを放り出すわけにもいかず、ラザルスは教育を施しながら彼女をメイドとして雇うことに。慣れない触れ合いに戸惑いながらも、二人は次第に想い通わせていくが…。やがて訪れるのは二人を引き裂く悲劇。そして男は奴隷の少女を護るため、一世一代のギャンブルに挑む。第23回電撃小説大賞・金賞受賞作!



感想:★★★★★

今年の電撃小説大賞もすごいのが出てきましたねー!
今のところ2017年で一番面白いと思った作品です。




いつも小金だけ稼いでいくというスタイルから「ペニー・カインド」のあだ名を持つ賭博師・ラザルスと、「大勝ちする」という失敗を帳消しにするために賭場から購入した奴隷で喉を焼かれている少女・リーラの物語。

良いと思ったポイントは、
①リアリティ
②口癖
③ジョン
④コイン
の4点ですね。



①リアリティは間違いなく狙って作られたもので、ついついラザルスという賭博師が実在して有名な記録が残っていると錯覚してしまうほどの精度。
あとがきにもある通りジョンやフランセスのような実在した人物を多少手を加えて登場させているという点はもちろん、メイド服の興りやテムズ川の汚染状況のような民俗学や地理歴史に分類される点においても非常に優れています。

その一方で時折入る作品世界の時間軸以降の情報が、この作品がフィクションであることを思い出させてくれました。
263pのヴァンテアンという賭博のことを説明する「フランスで生まれたこの賭博は十九世紀に入り急速にイギリス国内で広がりを見せ、二十世紀初頭になってアメリカで名前がこう変わった。ブラックジャックである。」という文章が良い例ですね。

ラザルスへの過度な感情移入は防ぎつつ、一方で作品世界にはどっぷり浸からせる。
読者を賭場の観戦者にするような表現だな、と感じました。




②ラザルスの口癖「どうでもいい」。
一言なのに、対応するシチュエーションにより存外多くの情報をくれる言葉ですね…。
108pで知った知り合いの賭博師の死の前後では重みが全く違うものになりますし、苦笑いしながらだったり吐き捨てるようにだったり言い方を変えれば事細かに描写するよりも分かりやすく感情が分かりますし。

さらに、「どうでもいい」と言いながらも実はしっかり考えているということ自体が、ラザルスをより賭博師らしくしているような気がします。
ポーカーフェイスのためのルーティーンのような。
興味ない風を装いながら計算することで相手を出し抜くような。

『C3 -シーキューブ-』のいんちょーさんの口癖「馬鹿げている」に似たものを感じます。
あちらも感情表現を含めていて、策士のようなところもあるので。



③ジョンがカッコ良すぎるんですよっ!!!!
脳も筋肉で出来ている系のキャラかと思いきや、性格イケメンだし要所で物凄く良い事言うし!
特に250p、攫われたリーナをダラダラ言い訳並べて取り戻しに行く決心を固めないラザルスに対して放った「お前がやりたいという以上に、やるべき理由が必要か!」の一言。
響きます……。

考えてみれば、拳闘を衰退させないために暗黙の了解以外のルールを制定しようとし、そのためにはと不利を承知で自分が勝手にそのルールに従って闘うような人。
他人を想い、自分を発露することことそが彼の人生
もしかしなくても作中で最もまともな人間はジョンなのかもしれません…。




④Twitterで大絶賛すると宣言した理由であるコインの仕掛け。
200pくらいまで読んだところで「ラザルスのコインが両面とも表で、それがオチだったらどんなに痺れるだろう」と想像していたんですよ。
賭博師ならイカサマ用の小道具(四五六賽みたいな)は誰でも持っているとか、コインを見た神父さんが微妙な表情をしたとか、それまでのコイントスが全部表だったとか、フラグはあったので。

そしたら本当に両面表だったし、最後の最後337pで明かされたし、何より「リーラに関する選択肢を提示した後、リーラにコインを手渡し、仕掛けに気づいたリーラが喜ぶ」という想像していた中で一番望んでいたものだったし!!!
フラグに気づいていなかったらもう1度読み返したくなること間違い無しな仕掛けでした!

種明かしの時にラザルスが言っていた「困ったときにやるべき事は、いつもあらかじめ決まっているのさ」というセリフはこれだけでも痺れますが、同じセリフを冒頭16pでコイントスする際にも言っているということがまた痺れに拍車をかけます。
賭博師の必須三箇条、勝たない・負けないに続く『祈らない』の由来ともとれますし。
状況的に「リーラを買う」ではなく「奴隷を買う」なんだけど、ラザルスがこういう仕掛けをやっていたから2人が出会ったわけですし。
教会でも救出前でも旅行前でも、リーラに関することでコイントスする時、ラザルスは既にリーラを自分の元に置いておくことを決めていたと言うことですよ?
萌えるなというほうが無理だ!




そんなこんなで色んな要素が混じり合い、取り憑かれたように読んでしまう作品でした。
上に挙げた以外にもリーラが声を出せないということを最大限に生かした展開だったり、ニリツ先生の美麗でシーンに合った雰囲気を使い分けたイラストだったりも引き込まれた理由でしょう。

周藤蓮先生、今後要チェックですね。




以上!


賭博師は祈らない (電撃文庫)
周藤 蓮
KADOKAWA (2017-03-10)
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