今日のラノベ!

織田信奈の野望 全国版18

織田信奈の野望 全国版 18

著者:
春日みかげ

イラスト:
みやま零

レーベル:
富士見ファンタジア文庫 


【あらすじ】

最初は一人で抱えていた、荒唐無稽な夢だった。夢が潰されかけたとき、良晴が現れた。夢に危機が訪れたときは、光秀が支えた。歴史上、あるはずのなかった3人の絆が、信奈の夢。「天下布武」を実現させようとしていた。そして―「『運命』はやはり、この私に関ヶ原で戦えて命じているのでしょう。私は、もう逃げません。吉姉さま、決戦の時です!」ついに覚醒した、戦国時代の真の覇者。信奈たちに、関ヶ原の「最後の試練」が立ちはだかる!戦いが終わったとき、夢は叶うか、潰えるか。全ての戦いは、この瞬間のためにあった。ここに―天下人が決まる!



感想:★★★★★

関ヶ原編、堂々の完結!


史上最大の死地に追い込まれた相良良晴
天下分け目の戦で覚醒した松平元康、改め徳川家康
「裏切り」の運命に翻弄される小早川隆景
死の淵をさまよう武田信玄
毘沙門天の名の下に戦い天下人を見極める上杉謙信
エトセトラエトセトラ…。


ひとつの実を拾おうとすると、別の実を落とさなければいけないような状況が18巻スタート時でした。
各戦線が複雑に絡み合っているし、そこに参戦している姫武将は皆「天下太平のためにこの関ヶ原で終わらせる」ことは考えていても「積極的に相手を殺す」ことは考えていない優しい姫武将ばかり。
死んで欲しくないけど、誰かが死なないといけない…。



ところが、致命的な状況に陥る度に神風が舞い込み続けます。
相良良晴が今まで繋げてきた絆という名の風が…!


たとえば「裏切り」の運命を受け入れ良晴救出に向けて動き出した隆景ちゃんを救ったのは、あの奸悪無限・宇喜多直家。
ドラゴンマガジン掲載中の良晴が記憶を失って毛利に身を寄せていた頃のお話で、毒が抜けたというか、ロリに目覚めて丸くなった直家さんが隆景ちゃんを庇う動きを見せ、戦線離脱。
もともと小早川家に恩があると言えなくもない宇喜多家だけど、あの直家がこんなにかっこよくまともな戦で散ろうとするなんて本来有り得ないこと。
(……散々な言われよう)



たとえば烏頭坂。
「場」の運命により討ち取られかけた島津家久を救ったのは、半兵衛が関ヶ原に建立した八幡神社を通じて現れた安倍晴明…あるいは前鬼と呼ばれていたもの。
家久上京時の、梵天丸じゃないほうの外伝掲載のストーリーでの家久と安倍晴明の縁もあったでしょう。

さらに本来の歴史において島津家久に討たれていた長宗我部信親。
彼があわや相良良晴と刺し違えようか、という折に一発の銃弾で救ったのが虚無僧・杉谷善住坊。
信奈の、良晴の、信玄の暗殺を意思の力で跳ね返された彼。
「暗殺じゃ世の中は変えられない」という良晴の言葉を、良晴自信に実現させるための救いの銃弾。
かっこよか……!





今までの物語を彷彿とさせるシーンは他にもいくつもありました。

光秀が簪を自分の太ももに刺して気を強く保ったり。
武田信玄による、上杉謙信考案の陣形「車懸り」は『天と地と姫と』での二人があればこその感動。
ついに関ヶ原に合流した尾張旗本衆・勝家、犬千代、長秀さんたちの奮戦は、桶狭間の戦いでの織田家家臣団の戦いと、アニメOPサビのあの映像を思い出して泣けてきたし。
ついに梵天丸は関ヶ原参戦、母・義姫との約束を守ることができた!




今までの主要キャラで今巻一言も喋ってないの、今川義元と近衛前久、姫巫女さま、北条氏康くらいなんじゃないかな?ってくらいの総出演による、天下分け目の大戦。
そして外伝と言いつつも外伝を読んでいないと容赦なく置いていくスタイル。
そういうの大好きです。




ある意味では、今巻は誰かが死の淵に立つ⇒都合の良い展開で救われる、の繰り返し。
でも、その都合の良い展開がなぜ起きたのかを考えると、それは良晴の「全ての実を拾う」精神の結晶であり、姫武将たちの民や平和への想いの結晶であり、誰かの強い想いに応えようとする誰かの足掻きであり。




“命をかけて荒野を駆ける戦いの日々の中

振り向くとそこに居て震え止めてくれる

悲しみの日が閉じれば野望の陽がのぼる

運命蹴っ飛ばし思うまま進もう

世界をリンクして”


(2012 愛美「Link」より)





信奈と織田家臣団
小早川隆景と吉川元春
武田信玄と武田四天王
島津四姉妹

そして、相良良晴



「場」の力に定められた死の運命を、かつて振り向くとそこに居た人たちが蹴っ飛ばし
甲斐、越後、尾張、中国地方、九州、関東、東北、そして京。
それぞれの世界をLinkして、天下泰平を、民のための日本国を目指す物語。



まさしく『織田信奈の野望』の総決算に相応しい、重厚な物語でした!!
ありがとう!!!!




あと少しだけ続くようですが。

良晴(秀吉)が、北条を帰順させる。
うーん、これは一夜城かな?






以上!


織田信奈の野望 全国版 18 (ファンタジア文庫)
春日 みかげ
KADOKAWA (2017-05-20)
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