どもー。
デスカイザーです。
どんなに苦しくても。
どんなに余裕がなくても。
それでも命をかけて読みたい作品がある。
そんな幸せな時間を過ごさせてくれて、ありがとう。
っていうことで翌日の仕事を眠気で彩った作品です。
今日のラノベ!
著者: | イラスト: | レーベル: |
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【あらすじ】 関ヶ原の合戦は終結し、信奈の天下布武がついに実現!東軍・西軍に分かれ争っていた姫武将たちも戦後処理のため、清洲城に集まり、ひとときの平和を楽しんでいた。しかし、その裏では…良晴との結婚を巡る、もう一つの戦いが勃発!?良晴を独占するため念願の祝言を急ぐ信奈に対し、小早川隆景・上杉謙信・島津家久などなど…良晴に想いを寄せる各地方の姫武将の家臣たちは、「側室同盟」を結び、大奥成立のため、密会・拘束・抜け駆け…陰謀と策略を巡らせる!?天下は信奈のものになっても、良晴だけは譲れない!恋のバトルの花咲く「清洲会議」が今ここに始まる!? |
感想:★★★★★
緩急が凄い。
まさに急転直下桶狭間
九州編あたりからの怒涛の戦ラッシュが関ヶ原でひとまずの決着。
そして始まるは恋の戦!
勢力図的に今まで交わることのなかった姫武将同士による掛け合いは、シリーズをここまで読んできたからこその微笑ましさ。
まさにご褒美ですね!
本多正信とかねたんの絡みなんかは「ありがとう」としか言えない…っ!
そんな平和な感じ、1巻当初とか6巻の本猫寺の雰囲気を一気に吹き飛ばしたのが、168pからの良晴と小早川さんのシーン。
今まで感じていた平和は、関ヶ原での熾烈な戦いの果てにあるもので、壮絶な苦悩の上に成り立つもので、尊い犠牲の上にあるものだというのを再認識させられました。
小早川さんが泣き出してしまう1行は、本当にズガンと殴られたかのような衝撃。
発売日の26時に読み終わってそれから丸2日経つけれども、未だに読んだ時に頭に浮かんできた小早川さんの泣き顔がリフレインします。
いつもの『信奈』であれば、このシーンの直前にあった御館の乱で気を引き締めるところだったんですがね…。
上杉景虎の“運命”の収束、良晴たちの命の危機っていうのを考えたら。
発生要因とか会話とか、のほほんとした空気が拭えない展開だったのは小早川さんのシーンを引き立てるためにあえてやっていたのでしょう…。
19巻の真の実力はここからです。
小早川さん、あんなに泣いていたのに、この後のほほん時空に飲み込まれていきます……!
再点火した恋心を押しとどめきることができず、誰が文句を言えようか、いや、言えまい。
……信奈以外。
そう、信奈は怒ります。
良晴のこととなると、烈火のごとく怒ります。
つい、第六天魔王になってしまうくらいには。
何が何でも帳尻を合わせようとする歴史の意思。
信奈を怒らせ、冷静じゃない状態にして。
論功行賞のミスからの破滅という項羽の歴史をなぞらせて強制力を高めるかのような、そして場の力が最大限発揮されるような本能寺の変直前の勢力図を再現する武将配置。
このシリーズで幾度となく良晴たちの前に立ちふさがってきた歴史の意思。
本能寺の変、関ヶ原の戦いと運命をついに乗り越えきったかのように思わせての、再来。
さらにそれを義元ちゃんが水際で防いだ結果、ついに歴史が暴走したのか外国船団の来訪。
そろそろ薄ら寒いものを感じます…。
死の状況とか無視して、ただただ死という結果だけが与えられるような終わりも想定しておくべきかもしれないです……。いや、本気で…。
いやぁ、それにしてもまさかですよ。
1冊の間に2回同じことやられるとは思いませんでした。
1度目は不意打ちで感動させられ、2度目は不意打ちで恐怖を感じさせられて。
冒頭にも書いたように、緩急が凄かったです。
戦続きからの日常編……だからこそ、彼女たちが戦っていたという事実を忘れさせるほどの楽しい描写と、どんなに忘れようとしても忘れきれないものを意識させる物悲しい描写のそれぞれが映えるんですね。
1つだけ、義元ちゃんが万能化されすぎてることに少しむむっと思いました。
それが彼女の魅力だというのは分かるんですが、「義元ちゃんの命を救わなかったら今こうして止められる人はいなかった」っていう良晴の考えは違うと思うんですよね。
「台風で土砂崩れが起きたが、台風による倒木が民家への被害を食い止めた。台風に感謝しよう」みたいな矛盾を感じるんです。
義元ちゃんを救わなければ信奈上洛あたりで詰みかけてるわけですから事実としてはそうなんですけどね?
歴史改変に対しての力不足を感じた良晴が立ち直るきっかけというのも分かるんですが……「冒頭回帰による感動現象」よりは「今更感」が強いですね、やっぱり。
次巻でついに最終巻になるのか。
それとも、装い新たに世界編とでも銘打って再スタートするのか。
前者の覚悟は決めているけれども、あとがき直前のいつもの勢力図の代わりに世界地図が載っていたのが後者の希望を捨てさせてくれないです…。
何はともあれ……春日みかげ先生のお体の具合が本当に心配になるあとがきなので、どうかお体ご自愛ください…。
そして願わくば『信奈』を、あるいはまだ見ぬ新シリーズを。
以上!
KADOKAWA (2017-09-20)
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コメント
コメント一覧 (4)
その気持ち凄く分かります。信奈の性格を考えれば19巻の終わり方は順当ですが、他の姫武将たちが報われなさすぎるんですよね……。そしてその分信奈が「芯の強い子」じゃなく「我儘な子」に見えてしまう。「野望は一人で見るもの」という言葉(……松永久秀でしたっけ?)を念頭に置くならば、まさに恋の天下統一、野望の成就と言えなくもないですが。
20巻では梵天丸の親や、信奈のかつての"父"たる宣教師にまつわるエピソードが期待されます。そこから家族や恋に関して信奈が価値観を変えて側室認可の大団円、という可能性を個人的には期待しています。……せめて小早川さんだけでも。本当に。
ただ、今回デスカイザー様や自分が感じた納得のいかなさや不満が他の方や場所でも山ほど出るのは作者自身も分かっているとは思います。ですからもし世界編のように続くのでしたら今回の展開には意味或いは伏線があって後々何かあるのではと思います。というかあって欲しいです。
20巻の展開ですが本当にそうなってほしいですね。自分は外国関係や今回の恋愛面で頭がいっぱいで全然思いつきませんでした。自分としては『これからもう少しは続くのかも!?→この状態もなんとかなるかも!?→外国と戦うなかでハーレムEDにいけるにはどうすれば?→せや!ヒロイン達の目の前で良晴が死ぬ或いは消滅して彼女たちが死に物狂いで取り戻すみたいな展開ならワンチャンあるかも!式神とかいる世界だしいけるで!!』という非常に強引かつ物騒な予想をしていました。
もっとも今後どんな展開になろうとも、そもそも次かそのまた次が最終巻かもしれませんが、最後までついていこうとは思ってます。できるなら全国版ならぬ全世界版な感じで当分続いて欲しいところですが。
どう思われますか?
信奈の「好きな人は皆先に死んでしまう」というトラウマ、金ヶ崎や木津川口とその後で良晴が死ななかったことで克服できてても良かったんですけどね……。敦盛の「人間二十年」も、もしかしたらそんな心の裏返しなのかもしれませんね。好きな人だけじゃなく、皆平等に死が訪れると。
全世界編、賛否両方ですね。もちろんシリーズとして続いてほしい気持ちもあります。が、全世界編だと良晴が信奈のために歴史に介入するという前提がもう成立しなくなってしまいます。信奈が世界に進出するとなれば、今度は信奈が歴史に介入していく側、しかも歴史知識も薄く、大義も薄い。それを『信奈』シリーズとして受け入れられるか……。
全ては作者様の力・考え次第ですし、何より体調が心配なのでまずは来る次巻を全身全霊で読みたいですね!