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今日のラノベ!


月とライカと吸血姫 2


月とライカと吸血姫 2

著者:
牧野圭祐

イラスト:
かれい

レーベル:
ガガガ文庫


【あらすじ】

『ノスフェラトゥ計画』の一件を評価されたレフは、実験体の吸血鬼イリナを監視する任務から解かれ、晴れて宇宙飛行士候補生に復帰。「人類史上初の宇宙飛行士」の座をかけた選抜試験に挑み、ライバル達と鎬を削る。一方、イリナに不穏な空気が忍び寄る。「実験体は用済みだろう。廃棄処分を」。昼と夜、すれ違うふたりの運命は。――宇宙開発の黎明期であり、最前線。様々な思惑に翻弄されながらも、命懸けで遥か宇宙を志すふたりがいた。宇宙に焦がれた青年と吸血鬼の少女が紡ぐ、宙と青春のコスモノーツグラフィティ第二幕。




感想:★★★★★







着実に「人類初の宇宙飛行士」という英雄への階段をあがっていくレフと、「実験体」として隔離されるイリナ

1巻でも対比についての感想でしたが、今巻はこの二人の対比がとても大きくて、切なくて……






レフはレフで、イリナを実験体として扱っているわけがないですから、宇宙飛行士として選ばれ自分が「初の有人宇宙飛行者」とされることに違和感を抱き続けるわけです。
でも、候補生の中から最初の一人として選ばれるためにはそうしたモヤモヤした気持ちを表に出してはならず、その葛藤が、読んでて、つらい……



イリナはイリナで、自分が吸血鬼だから公表されることも歴史に名を刻むこともないことには納得しているように見せつつも、レフ達候補生から選抜されての宇宙飛行が近づくにつれて「自分が最初なのに!」という違和感がドンドン強くなっていく様が見て取れて。
レフが宇宙を飛んでるまさにその時、アーニャに抱かれ泣き崩れる姿があまりにも悲しくて……






122pの別れから296pの再開まで。
わずか170pにも満たない離別が、あんなにも苦しくて、あんなにも無力で。

主人公とヒロインの離別は古来より受け継がれしラブコメの王道ですが、距離も難易度も違うじゃないですか!




「運送屋」がイリナの始末に動いたら。
レフの打ち上げが失敗したら。
レフの式典での行動に発砲されていたら。
ミハイルかローザが選ばれていたら。
イリナが脱走していなければ。




行動的にも物理的にも、どこかで何かの歯車が狂っていれば叶うことのなかった再開。
はぁぁぁぁぁ…………
ほんと良かった……




読書メモ




122〜125p:別れ
⇒上でも少し触れましたが。
短い間とはいえ苦楽を共にして、吸血鬼と人という種の違いに全く意味を見出さなくなった二人。
お互いがお互いに未来に不安を抱えていて、再開できるかも分からなくて。
夢を不意にしてほしくないから、心配させたくないと思っていることを分かっているから、ただただ抱きしめることで体温を伝え合うことしかできなくて。
むーん(語彙の尽きた音)



205p:1212
⇒レフの打ち上げ、イリナの打ち上げの丁度4ヶ月後になるわけですか……
ふーん……(エモ)



216p前後:鳥肌が止まらない
⇒レフの打ち上げシーン
イリナの時にはブリュシチだったシーンも、今回はレフの主観。
重力から解き放たれ、自分の住む星を外から見る興奮たるや……



306p:まとめたよ……
⇒レフの暴走とも取れる行動があっても、共和国としての地位を何ら落とすことなく、対立する連合王国への皮肉まで込めて完璧にまとめあげる。
トップのトップたる資質を見せつけられました。
レフもイリナも、まだ国の手のひらの上か……




まとめ




あとがき後に出てきた連合王国側の新血種族が3巻のキーマンになるわけですね(雑な名推理)




月に辿り着くんでしょうか。
レフとイリナと、二人で辿り着けるんでしょうか。
ここまで来たらなんとか頑張ってほしい。
でも技術的なアプローチはまだまだ課題が多そうで……





お願いだから「運送屋」大人しくしてて……









以上!


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今日のラノベ!

月とライカと吸血姫


月とライカと吸血姫

著者:
牧野圭祐

イラスト:
かれい

レーベル:
ガガガ文庫


【あらすじ】

 いまだ友人宇宙飛行が成功していなかった時代。ツィルニトラ共和国連邦の最高指導者は、人間をロケットで宇宙に送り込む計画を発令。その裏では、実験飛行に人間の身代わりとして吸血鬼を使う『ノスフェラトゥ計画』が進行していた。閉鎖都市で訓練に励む宇宙飛行士候補生のレフは、実験台に選ばれた吸血鬼の少女、イリナの監視係を命じられることになる。上層部のエゴや時代の波に翻弄されながらも、ふたりは命懸けで遥か宇宙を目指す。宇宙に焦がれた青年と吸血鬼の少女が紡ぐ、宙と青春のコスモノーツグラフィティ。




感想:★★★★★



綺麗!!









国家間の開発競争とか地位や権力への固執だとか、そういう醜い大人の世界の中で描かれているからこそ、レフとイリナの抱える純粋な「宇宙への憧れ」がとっても綺麗でした!!




この作品、総じてそういう対比がうまかったなぁという印象です。


ツィルニトラの白一色に染められた景色と、宇宙から見たオーロラ輝く青い地球の姿とか。
候補生補欠のレフの純粋さと、候補生トップのミハイルやローザの必死さとか。


ただ、間違っちゃいけないのが綺麗じゃないほうの扱い。
そちらはそちらで、必死さ、泥臭さ、執念深さへのリスペクトが感じられて、決して悪印象を抱くような対比ではありませんでした。


(もっとも、そういう描き方をしないと吸血鬼だけを特別視するだけの、上辺だけの平等を謳うことになるので当たり前と言えば当たり前)








うん、まぁ……
これだけ「綺麗事」な感想を書けるのも、全てはイリナの宇宙飛行のシーンがあってこそですよ。


人類初の有人宇宙飛行。
打ち上げのシーンは鳥肌を抑えられないほど緊張と興奮に包まれて。
訥々と語られるブリュシチの調理法は、内容と裏腹に希望に満ち溢れていて。
あくまでも「実験体」として扱っていた上層部でさえも、「有人」の飛行に興奮を抑えきれてなくて。
キャビンから見る月はとても綺麗で。
難題だった帰還時のパラシュートも何とか成功して。



全てうまい方向に転がったからこそ、です。
この打ち上げが失敗してたら…………相当に心抉られていたでしょうね……想像するだけで恐ろしい……

それはそれで読みt








吸血鬼という未知の存在と、宇宙という未知の場所。
物語が進むにつれて、それぞれ既知の事柄が増えていき…………うん、なんかそれはそれで厄介なことが待っていそうですけどね。

色々知っちゃっているからこそ、今後のイリナの処遇がアレなわけですし。
イリナがアレだとレフのアレもアレですから、そうなると物語の気色も変わってきてしまうからムニャムニャ。







どのタイミングまで「綺麗な物語」であり続けるのか、楽しみです




以上!



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今日のラノベ!



ピンポンラバー

ピンポンラバー

著者:
谷山走太

イラスト:
みっつばー

レーベル:
ガガガ文庫


【あらすじ】

かつて天才卓球少年と呼ばれた飛鳥翔星は、怪我のため卓球界から姿を消した。それから数年後、私立卓越学園の入学式に彼の姿があった。そこは日本全国から集まった卓球エリートたちがひしめく最高峰の学園。翔星がこの学園に進学した目的は小学生時代に唯一敗北を喫した名も知らぬ少女を見つけ出し、そして勝利することにあった。だが、入学初日にして彼は本物のエリートによる洗礼を受けることになる…。その身を焦がすほどに卓球を愛し、すべてを捧げた少年の燃えるような青春。第12回小学館ライトノベル大賞・優秀賞受賞作。




感想:★★★★★





卓球のスピード感をよく文章に落とし込んだな!!と感心しきりの300p!!!





どもー。
1000円ラケットで素振りしていたら打つ面が吹っ飛んでいった経験があるデスカイザーです!
私には手元に残った柄を見ながら笑うことしかできなかった。






ということで、
(幽霊部員歴のほうが長い)元卓球部なので読んでいて久々に卓球やりたくなりました!!





相手がサーブをトスしてから打つまでの一瞬の静寂とか、


ボールを見るのではなく腕や動きから予測するとか、


打った瞬間に球の行方を覚えて次の行動を意識するとか、


芯を捉えられなかった時の「ポコッ」とか。




リアルなんですよ。
1プレーあたりの時間で言えば文字を追うスピードのほうが圧倒的に遅いはずなのに、とてもリアルに卓球を見ているような、実際に台の前に立ち相手の動きを観察しているような。





瑠璃の「氷壁の反射」アイスドカウンター、紅亜の「嘲笑の魔球」ラフィングマジックのようなスキルも、確かにスゴ技ではありますが技術と努力の積み重ねと才能があれば非現実的とまでは言えない範囲。
フィクションのようでフィクションでない、その絶妙なラインコントロールが今作のリアリティを損なわないままにライトノベルとして成立させている要因でしょう。



…………。


…………………………。


…………………嘘です!
ゼロバウンドはともかく、ピンポン球のスピンで台が焦げ付くとかラバーが裂けるとかは無理です!!!!


そこはフィクション。
なんだあの魔女。すっげぇぞ。


ドライヴ(上回転=ボールが低くバウンドして前に進む)に見せかけて横回転とか、台の逆サイドに飛び込んで取るとか、我武者羅に卓球やっていた自分のプレイスタイルをもっと遥かな高次元でやってのけてしまうキャラたちに、思わず嫉妬です。
アレができたら本当に楽しいだろうなぁ……






卓球に関する約束に誠実であろうとする少年少女の誠実さは、卓外でもスポーツマンシップを持ち続けていることの証左でもあり、約束の相手=自分が敵わなかった相手への最大限のリスペクトでもあります。

ねー。
そう考えるとラストシーンまで引っ張られた「将星の約束の相手は誰なのか」という命題に対しての回答とそのリアクションがとても愛おしいです。






読書メモ




65p:ダメ!
⇒中学時代プールでトレーニングしていたことも合わせると膝の怪我かな?とほぼ確定したシーン。
怪我をした本人以上に、椿からしたらこの試合はハラハラしていたことでしょう……。
その後明かされた「怪我の原因」をふまえると、余計にそう思います。
思わず叫んでしまう気持ちも痛いほど伝わってきます……



103:惚れ……
⇒あっれぇ……?志乃ちゃん一目惚れですか……?
今回は案内キャラに留まっていましたが、彼女はエスカレーター組。
つまりそれなり以上の実力、あるいは飛び抜けたものを持っている……はず。
2巻以降の彼女のポジションに注目です。



178p:やっぱり瑠璃じゃね!?
⇒約束の相手は紅亜か、それとも瑠璃か。
最後の最後まで確信しきれず、楽しませてもらいました。



197p:骨なしチキンのお客様
⇒唐突なTwitterネタ!!
このネタ、コンビニ行く度に思い出してしまう呪いと化しています……





まとめ




熱いスポーツものでした!
今まで自分が読んでこなかっただけこましれませんが、こういったお色気ゼロのガチスポーツラノベは初めて読んだように思います。
楽しかったです!!


個人的な話ですがここ数冊お色気・ラブコメ続きだったので、正反対の位置にあるこの作品をこのタイミングで読んだ自分にgood jobです。


まだまだ入学してすぐのエキシビションが終わったばかり。
これからの展開が楽しみです!




以上!



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今日のラノベ!

六人の赤ずきんは今夜食べられる


六人の赤ずきんは今夜食べられる

著者:
氷桃甘雪

イラスト:
シソ

レーベル:
ガガガ文庫


【あらすじ】

名声のために罪を犯した過去を恥じ、今は猟師として各地を旅する「私」。ある日、訪れた村で奇妙な警告を受ける。「森には秘薬を作れる『赤ずきん』が棲んでいる。赤い月の夜、彼女たちはオオカミの化け物に喰い殺されるが、決して救おうとしてはならない」。少女らと対面した「私」は、警告を無視して護り抜こうと決意する。だが、そのとき「私」は知らなかった。その化け物が、想像を遙かに超えた恐ろしい生き物だということを。そして、少女たちの中に裏切者がいることも―。第12回小学館ライトノベル大賞・優秀賞受賞作。



感想:★★★☆☆

⇒修正:★★★★★(2018/11/10)



誰もが知るグリム童話「赤ずきん」をモチーフとした物語で、第12回小学館ライトノベル大賞優秀賞受賞作品!
1年のうち1夜だけ現れる化物オオカミから、6人の赤ずきんを守りきれるか!?という物語です。


すっごく面白かったです!!
寝る前に少しだけ……と思っていたらいつの間にか読み切ってしまいました!
まさに帯にある通りのパニックホラー×ナゾトキ!


猟師さんと6人の赤ずきんには2つの敵が存在します。
化物級の体格と恐ろしいまでの知識を備えたオオカミと、赤ずきんの中に潜む“オオカミを生み出した魔女”。
どちらか片方に対処するだけでも十分面白い話になりそうなものが2つ同時に驚異として立ちはだかってくるわけですから、まさに息つく暇もないような絶望感!
どのくらい絶望するかというのを、オオカミの簡単なスペックを紹介することで味わっていただきたいと思います。



・石畳に響く爪の音を隠すため、近くの村からパン生地を強奪し足につける
⇒ファーストインプレッションがこれですからね

・銃と戦い慣れている
⇒弾の装填の隙を狙ってきます

・銃を弾く
⇒剛毛すぎて弾きます

・船に乗る
⇒船という存在を理解し、引っ張ってきて、乗り込んで、渡ってきます

・鋭敏な嗅覚、聴覚
⇒なんと言ってもオオカミですからね








いや、無理じゃろ







6人の赤ずきんが作るそれぞれ効果の違う6種類の秘薬があってなお、ようやくギリギリ凌げるかどうかといったところで……。
いや、本当に猟師さんはあそこまでよく頑張ったよ……。


ナゾトキは最後の最後まで当てることができず悔しいです……
というかナゾトキに頭を割くことができなかったんですよ。オオカミが驚異的すぎて。
一応ヒントらしきものが出る度に5秒くらいは考えてましたが、「まずは生き残らなきゃ……」と読む方に戻っちゃうんですよね(笑)
そのおかげで自分で推理しないまま解決パートを迎えるという、稀有で面白い経験ができたので良かったです!

守るべき存在でありながら疑い続ける、という苦しい状況にありながらも赤ずきんたちをまとめようと奮闘していた猟師さんの心意気に感動しました。
その奮闘を評価すればするほど、“魔女”の黒さが浮き彫りになってくるというものです。







(ここから少しネタバレ?)





エピローグ前までの感想なら文句なしの★5なんですが、問題はそのエピローグにありまして……。


「猟師さんが頑なに頭を隠してきたのは青髪だから」


猟師さんの頭髪問題は本編中から勿体ぶられていたんですが、このエピローグで青髪であることを猟師さんが自白し、そして『青ひげ侯』というツバキずきんの発言に括弧まで付けられて強調されたところで終わります。
そんなに勿体ぶって物語の一番最後に明かすからには、とても面白い意味が隠されているはずなんですが知っている限りでは全くヒットする情報がなく、蛇足感のみが残っています……。


この作品自体『赤ずきん』をモチーフにされており、他にも作中では『白雪姫』『灰かぶり』『オオカミと七匹の子ヤギ』が元になっているであろう文章があったので、恐らくこの「青ひげ」もグリム童話にヒントがあると思うんですが……。

調べてみると、グリム童話の初版にのみ収録されているお話に「青ひげ」というものがありました。あらすじは以下。

青髭で恐れられていた金持ちの男が、4兄妹の妹と結婚する。
青髭の妻となった妹は城のどんな部屋にも立ち入ることができたが、ある小部屋だけは絶対に入ってはいけないと念を押される。
ある日、青髭の外出中に妹は好奇心に負けて小部屋を覗くが、そこには失踪していた過去の青髭の妻たちの無惨な姿が。
覗いたことがバレた妹は青髭に殺されそうになるが、間一髪でかけつけた兄たちに助けられ、青髭は殺されその遺産は兄妹たちが分け合い幸せに暮らした。



この青ひげというのは、Fateでもお馴染みジル・ド・レがモチーフとする説が有名ですが、猟師さんは彼……なんでしょうか?
化物級のオオカミに付けられた「ジェヴォーダン」という名前は「ジェヴォーダンの獣」として実在(?)していて、その最初の犠牲者がジャンヌ・ブルという少女なんですよ。
そこと繋げつつのネーミングなんでしょうか?


仮にそうだとしたなら、猟師さんにグリム童話の青ひげのような未来が待っているということでしょうか?


もし違うのなら、青ひげをここまで引っ張った真意はどこに……?



すっっごく面白くてとても良い気分で寝れそうだったのに、最後の最後に特大のモヤッとボールを投げつけられた気分でした……。
マジでなんなの……

ここの意図が分かる方、コメントで教えてください……お願いします……




(2018/11/10追記)

青髭の意図についてコメントいただきました!
で、半年経って改めて振り返ってみるとあの青髭があったからこそ、ダークファンタジーとして纏まっているのかな、と気づくことができました。
コメント感謝です……!

それまでの話がそれなりに答えのハッキリした物語だった(謎解きの要素がある為にそうならざるを得ない)ので、ついそっちに引っ張られちゃったかなぁ……と自己分析しています。

そんな気づきがあったので、感想も★3から★5へ修正しました!






次回作に期待です!
いや、本当に!
エピローグまでは滅茶苦茶面白かったので!



以上!

(参考文献:Wikipedia「青ひげ
              Wikipedia「ジェヴォーダンの獣」)

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どもー。
デスカイザーです!


本日仕事納め。
4月の時点では仕事納めという概念が存在しないサービス業での就職だったので、年末を迎えた今仕事変わってるわ年末年始休暇が存在するわで少し嬉しかったりします。

なんというか……今年は色々あったなぁ!!
仕事面では本当に色々な方に支えられて頂いたおかげで決断できて、今普通に生活できているので感謝感謝です。
ありがとうございました!
そして今後のdeskyzerの仕事面での迷走を、是非ともtwitterと当ブログで見守っていただければと思います。



それでは、今日のラノベ!

出会ってひと突きで絶頂除霊!

出会ってひと突きで絶頂除霊!

著者:
赤城大空

イラスト:
魔太郎

レーベル:
ガガガ文庫


【あらすじ】

―絶頂除霊。それは突いた相手を生者死者問わず絶頂させ、もののついでみたいに昇天させる猥褻能力。絶頂除霊などという呪われた能力を宿した少年・古屋晴久は、同じような呪いの眼―淫魔眼を持つ少女・宗谷美咲に出会ってしまう。その眼によって弱みを握られた晴久は、半ば強制的に退魔師史上最低最悪なチームを組むことに。初めてのまともなお仕事は、怪異「乳避け女」との大活劇。今宵も街には嬌声が響き渡る。それは紛れもなく、昇天の証明。ポンコツ退魔師たちが卑猥な能力で大活躍?ちょっぴりエッチな退魔活劇!!



感想:★★★★★

ひっでぇタイトルwww



というファーストインプレッションは覆りませんでしたが、その感じ方は少し変わったかもしれません。






突いた相手を絶頂させる。
そう、確かに猥褻能力。
なのに、そこに至るまでのヒューマンドラマがそこまでエロく感じさせないんですよね。
真面目に悩んでいたからこその怪異化。
真面目なのに絶頂させるしか除霊方法の無い主人公。
バカらしさと真面目さが両立しているということをタイトルが見事に表現していると思うんですよねぇ…。ひどいタイトルですけど。

これが作者的に成功なのか失敗なのかは分かりませんが、読者としては期待を裏切られたのに納得感を持って読み終えることができました。





そう。
読み終えることはできました。
できたんですが、既に次の巻への期待値がですね?

というのも彼女の存在です。
主人公の幼馴染の、葛乃葉楓嬢。
エピローグⅡでとある秘密が明かされて楽しみ!……とかではなく、それについては本編読んでいる間に気づいていたので(へーんしん!)「お、予想とおりだ」で済んだのですが。


おい破壊力やべぇぞ?
この鉄面皮、膝枕、超笑顔、後輩、超笑顔(語彙力)



で、しかもこの子2巻で主人公への複雑な気持ちという隙を突かれて物の怪の類に取り憑かれてしまい、そこを主人公の絶頂除霊で解決するんですよね?
あらすじも何もまだ出ていませんが、そうなると信じています。
2巻が違ったら3巻でも良いです。
もう絶対そうなるというかそうなれ!!!!!
僕は赤城大空先生の書き記すそのシーンと魔太郎先生のイラストがかけ合わさった瞬間に立会いたい、ただそれだけなんです……っ!

別に楓嬢のあられもない姿が読みたいわけじゃないんです……っ!!





『下セカ』からギャグの切れ味はそのままに、ネタのアホらしさが薄れたような印象。
個人的にはあちらは癖が強すぎてあまり続きを読む気にならなかったので、今回のは結構ありがたい路線変更ですね。
こう、こちらは虚構を虚構のまま楽しめるけど、あちらは虚構が現実を狂わせる錯覚に陥るといいますか……。
ま、まぁともかく。




楓嬢のあられもない姿、楽しみです。





以上!





出会ってひと突きで絶頂除霊! (ガガガ文庫)
赤城 大空
小学館 (2017-10-18)
売り上げランキング: 48,641
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