デスカイザーのラノベ日誌

ライトノベルの感想を……綴るっ!

カテゴリ: 講談社ラノベ文庫

今日のラノベ!

銃皇無尽のファフニールⅩⅢ

講談社ラノベ文庫より
『銃皇無尽のファフニールⅩⅢ スターダスト・クライ』です。


【あらすじ】

イリスに弓を引き、偽物の篠宮都とともに去っていった深月。自らを犠牲にしようとする彼女を止めるため、悠たちは彼女を追う。向かうのは、かつてアトランティス大陸があった場所に残る、最後の不可知領域。だが、そこはサード・ドラゴン―“真滅”のラグナロックの霧に包まれていた。その中に姿を消した深月と都を追って、悠はリーザたちとともに突入するが、そこで彼らが見たものは…!?「もうっ…深月さんは本当に―いつも一人で勝手に悩んで、突っ走るんですから…危なっかしくて仕方がありませんわよ!」冷たい闇の中で、叫んだ言葉を光に変える。霧の彼方に消えた彼女に届くように―。アンリミテッド学園バトルアクション第十三弾!


感想:★★★★★

全方位へのフラグが全て成立していると、ラブコメはこんなに平和になるんですね!



シャワー上がりのリーザ・アリエラ・レン・フィリルの着替えに乱入しても「恥ずかしいけど今さら騒ぐことでもないし…」で済まされるどころか、その場にいることも取り立てて拒否されることもなく。

人類に大いに災いを撒き散らしたヴリトラちゃんのほっぺたをつまみながらババ抜きをさせても怒られず。
ババ抜きの相手だったキーリは、当初の(それこそ禍炎界(ムスペルヘイム)のように)触れたらやけどどころか爆発しそうだった雰囲気は完全に霧散してお母様(=ヴリトラ)の可愛い姿に柔らかい笑みを浮かべ。

義妹の深月からは結婚後の財産管理を何でもないことのように言わしめ。

ティアとイリスは悠と同じ布団のなかにいること自体もはや当たり前のような感じすらあるし。




これが……ハーレム………!!!
というか一夫多妻?

本筋が本筋だけに一般的なラブコメなら多少ギクシャクしたりするところがギクシャクしないで済んだというのは、砂漠の中に給水地点が整備されているような読みやすさがありました。

もっとも、アリエラが言っていた「今のモノノベくんを怒る気にはなれない」という言葉を考えると、そうしなければいけないくらいモノノベが危うく見えていたという裏返しかもしれませんが。
だから次巻以降でのみんなの対応によっては、一夫多妻制の崩壊もありえる。
……いや、皆やっぱり素でモノノベ好きなだけだよな(前言撤回)。
そこで葛藤があるくらいだったら皆で一緒に見初められようとはならないもんな。


モノノベの周りで、水銀よ、成れ!!






本筋のほうで特に重要だった情報は、

・ノインの権能は言葉に宿る
・ノインの力=セブンス・ドラゴン(アポカリプス)の権能≒宙を定める蒼光(シャマシュ)(終焉残滓に最も長く抗った存在)
・篠宮都の魂は本物、ただし在り方は違う
・ツヴァイと都が二心同体、身体の所有者に意識の優先権


本筋はだいぶ前から「なるほど!(分からん)」としか言えなくなってきてるけれども、やっぱりドラゴン関係のほうはふわっとしたところしか理解できてない気がしますね…。
モノノベも言ってたけど、なんでノインの権能としてドラゴンの力が宿っているんだろう…?

あ、でも都のほうはさすがに理解できてますよ?

全ての終わらせ方にもよるけど、もしかしたらツヴァイとしても都としても「帰ってくる」可能性が残されているというのは、今後読み進めるうえでの期待になりますね。
最悪、裏切られても良い。
けど、深月や深月を心配するリーザ、そして何より篠宮先生の内心を考えると、最善の可能性を実現してもらいたいなぁ、と思います。




ヴリトラ出陣の構え。
となると、“本物の”ドラゴンを軸とする『ファフニール』第二章もそろそろクライマックスでしょうか。
14巻も情報量が多くなりそうで、今から恐ろしいです…。



以上!


銃皇無尽のファフニール13 スターダスト・クライ (講談社ラノベ文庫)
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講談社 (2017-02-02)
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今日のラノベ!

トにした。

講談社ラノベ文庫より
『トラックに轢かれたのに異世界転生できないと言われたから、美少女と働くことにした。』です。


【あらすじ】

もしも、己が望むような「異世界転生」ができるとしたら―?前世の記憶を保持しつつ、チート能力持ちの俺TUEEEEE勇者として、悪をなぎ倒す無双人生!または魔王として、生意気な勇者たちを圧倒的な力でもって打ちのめす人生!それとも可愛い女の子たちをはべらせ、ハーレムを築く人生!?―ならばぜひともお願いしたい!そんな思いを密かに抱く高校生の志郎は、本当に死んでしまっていた。しかもトラックに轢かれて。このフラグ、期待せずにはいられない!!そこに現れた、エルフにも見える美少女フィリア。彼女は志郎に告げる。「あなたは転生できないの」…え、うそでしょ?志郎の転生(できない)ライフがいま始ま…る?


感想:★★★★★

生前とことん頑張らなかった主人公・志郎が、死後の世界で頑張って働くお話。




舞台は死んだ魂が集められる役所のような場所。
異世界転生ものではおなじみの、死んでから異世界に行くまでの狭間の世界ですね。

今まで、
転生させる存在=神かそれに近い存在

…という固定観念があったので、それがお役所というかハローワークのような場所として描かれ、仕事ぶりが非常にブラックだったところにギャップを感じて面白かったです!
志郎だったりフィリア(表紙真ん中の子)みたいに仕事に情熱を持ってとりかかれる人にとってはまさしく天国のような仕事場のようだし、それはそれで良い職場なんでしょう。




作品のテーマは「何かに真面目に取り組むとは?」でしょうか。

感想一行目に書いたとおり生前努力をあまりしなかったため転生ポイントが少なく理想の転生ができなかった志郎が、皮肉にも死後の世界で頑張って働いてポイントを稼ぐというストーリー。

ぶっちゃけてしまえば「結局目の前に餌つり下げられないと動かないんじゃん…」と思ってました。
でも志郎は違いました。
いや、動機は確かに餌につられてなんだけれども。

本当に転生希望者に対して真摯に向き合うフィリアの姿を見て、実際に転生していく人たちを見て。
さらに、生前「死ぬほど頑張っていた」のに夢を叶えることができなかった同級生・茉琴を見て。
心の底から「頑張ってきた人たちが、せめて来世で報われるように」と思い仕事に取り組むようになり、ついには転生者のためにフィリア以上にあがくように。
そして、そんな志郎の頑張りを見ていた転生者たちも次第に志郎のために何かしたいと思うようになり…。



ということで、
「何かに真面目に取り組むとは?」という問いには、
「その何かに関わった存在の人生を変えること」という答えを。

いい加減に生きている分には誰も振り向かないけれど、
誰かのために時間を使える人には、その人にも誰かが時間を使ってくれる。




…ポエムか





他2つほど面白かった点を!

・身長
数字が具体的っ!
他人の身長の予想が1cm単位とかこやつ何者じゃ…!?

・スライム
今作のメインヒロイン、スライムのレンちゃん!
その圧倒的可愛さと底の知れない愛の深さに、志郎からの愛情もページをめくるごとに深まっているのが妙にハマりました!
レンちゃんの知能指数が段々上がっていくにつれて、あざとさを感じるようになるんだけどレンちゃんがそんな計算しているわけがなく全ては志郎のためを思っての行動なのでレンちゃんは絶対に天使(スライムです)。


・イラスト
こもわた先生のSDキャラはPCゲームブランドのゆずなんちゃらとかでよく見ているんですが、こういうイラストをお見かけするのは初めてでした。
こっちもいいですが、やっぱり真骨頂はデフォルメが入った時でしたね。
221pのわたわたしてるフィリアがお気に入り!





第一転生課、第二転生課が存在するこの世界。
他にも色々死者に関する部署があったりするのかな?とか、食堂の食材はどこから来ている…?とか、手土産って具体的に何なんだろう…?とか、全ての世界の(それこそひと月で何百万何千万人単位の)転生者に対応する人数がそもそも少なすぎない?とか大小色々疑問がありますが、疑問が浮かぶということは興味のある証。
とにかく2巻が待ち遠しい!




以上!



今日のラノベ!


黒ギャルが異世界に転生してダークエルフと勘違いされました

講談社ラノベ文庫より
『黒ギャルが異世界に転生してダークエルフと勘違いされました ~モンスターもマナもマブって実は最強~』です。


【あらすじ】

事故で異世界転生した色黒ギャルな女子高生・東条あにすは、その容姿から、ダークエルフと間違えられてしまう。兵士に捕らわれてピンチに陥るあにすだが、小国フィニアスの王女ラダに救われる。そしてどうやら、あにすはオークなどのモンスターや、万物の力の源であるマナさえも魅了できる、『マブる』という特殊なスキルを持っているらしい。女難の相を持つ冒険者ケンゴとともに、新米冒険者として活動しつつ、元の世界に戻る方法を探すことにするあにす。しかしある日、ラダ姫が何者かにさらわれてしまう。そしてその事件は、フィニアスに迫る戦乱の予兆で…?ギャルが異世界を舞台に数々の伝説を築いていく痛快ファンタジー、ここに開幕!


感想:★★★★☆

事故死で異世界転生というのは最早定番となっているけれども、ベッド型日焼けマシーンの暴走事故がきっかけとなっているのは初めて見ましたねー……。
ありふれてる「異世界転生」という設定をこういう切り口で面白くしていくのは、もっと増えていってほしいですねー!
バス・電車・トラックっていう三大異世界転生乗り物も、それ以外が増えていけば一種伝統芸のような立ち位置で味が出てくるでしょうし。

ほかの作品で思いつくのは、アニメ2期放送中の『このすば!』のトラクターに轢かれかけてのショック死とか、『もじょと極める異世界仰天生活』の文字通りの青天の霹靂死とか?
調べれば(思い出せば)まだまだありそうですね。





内容は……大体タイトル通り。
ダークエルフとして転生したのではなく、あくまでも黒ギャルとして転生された主人公・あにすが、固有能力「マブる」(=仲良くなる)で人だけでなくモンスターとも仲良くなり…、というお話。
水着なのは、生前日焼けマシーンに入っていたからですね。

……そう考えるとこの転生はいわゆる魂が転生したんじゃなく、肉体的な転生という形に…?
あれ?ワンチャン元の世界に帰れるのかも…?




指導役のケンゴがこじらせている女嫌いを、かつて自分が黒ギャルとなった経緯と重ね合わせズバズバ切っていくあにすがかっこよかったです!

その内容はケンゴの近くにそれなりに居たら誰でも分かることだったかもしれないけども。
それなりに居たらケンゴの過去の話も耳に入って、核心に迫る事は言いづらいだろうに。
そこに、踏み込む強さ。

「自分はこう思った」というのを包み隠さずぶつけていくあたりは、さすが座右の銘が「素直に生きる」というだけのことはあります。
その座右の銘に至るまで彼女が優等生としてどれだけ我慢してきたのか、本編で少し触れているだけということが逆にリアリティを感じました。
あにすほどじゃないにしろ、似たような状況でうまく立ち回れなかった(期待に応えられなかった)経験があるので余計に共感しました。

核心には踏み込むけど押し切らずに引いてケンゴの考えを尊重した彼女の言動は、「こうやってほしかった」っていう彼女の理想なのかも…?





モンスターとマブることで起こる展開は概ね予想通り。
マナに関しては予想よりも自由度が高かったですね。

ただし、タイトルにある「最強」というところには疑問が残る内容でした。
駆け出しの冒険者としては驚異的な活躍であることは間違いないけれども、

あにすは、その戦闘で役に立たなかった。
盗賊達に対して弱すぎたからではない。
カエデが圧倒的なまでに、強すぎたからだ。
” (本文219p)

……と、カエデ(王女護衛の侍女)>あにすという式が成立しちゃってますからねぇ…。
ついでにカエデは国にある4つの軍隊の将の長と同等くらいの強さで、さらにその将と同じくらいの強さなのが件のケンゴで。

将来的に強くなるという意味と、ギャルっぽさを込めて「~実は最強?」というタイトルだったらパーフェクトだったんですが……、実に惜しい!




あと猛烈に気になったのが、帯に書いてある“つらたん?いやいや、これは冒険譚!”という言葉!
キャッチコピーだと思ったら、あにすのセリフでした…。

こう、何と言いましょうか…。
黒ギャルが言うにしても優等生が言うにしても、どちらにしても強烈な違和感がね!?
そこに至るまでで出来ていた「あにす=真面目なギャル」という印象が音を立てて崩れていきました…。
まさかのオヤジギャグ…。
このワードを思いついた時の七烏未先生のドヤ顔が目に浮かぶ…。




あにすが伝説の調停者(ドルイド)と呼ばれるまでの物語。
ダークエルフ要素・黒ギャル要素が無理なく続く限り読みたいです!



以上!


どもー。
デスカイザーです。


2本まとめて買っておいたビニール傘の直径が微妙に小さくて、今朝の雨でひざ下ビショビショでした!
そもそも傘をさし慣れてないというのもありますが。
大学行く時はさすけど、バイトの時は自転車なので合羽でびしょ濡れヒャッホー!なので。
道交法は守りましょう。




そんなわけで今日のラノベ!

ツール・ド・ガールズ!!

講談社ラノベ文庫より
『ツール・ド・ガールズ!!』です。


【あらすじ】

天才サイクルロードレース選手の少年・狼堂迅人は、世界大会での優勝を目前にして、怪我により競技の道を断念することになった。失意の日々を送る迅人だが、縁あって高校の女子自転車競技部の監督を務めることになる。世界大会の女子部門“ツール・ド・ガールズ”優勝を目指す部長の小鳥遊あひるをはじめ、個性豊かなメンバーたちのひたむきな様子に、当初は気乗りしなかった迅人の姿勢も次第に変化していく。しかし、そんな彼女たちの前に、迅人と深い因縁のある世界トップクラスの選手、シュリック姉妹が現れ…?「あたしは―あたしの大好きを証明したい」第5回チャレンジカップ“優秀賞”受賞の青春自転車ストーリー!


感想:★★★☆☆

講談社ラノベ文庫編集部は、すごい逸材を見つけたのかもしれない…。




内容はずばり「ロードバイク×美少女」(あとがきより)。
『ラブライブ!!』と同じノリのタイトルです。
つまりタイトルと同名の大会に向けて美少女たちが努力するお話です。


私が乗っているのはロードバイクじゃなくてクロスバイクなのですが、それでも彼ら彼女らの言う魅力というのはすごく共感しました。
自分の踏み込んだ分だけ風を切る感覚が変わっていく感覚、自分の力で進んでいるという実感。
私は趣味として、ですが迅人やあひるは競技としてそれらを感じているんだからさらにワクワクするんだろうなぁ、と思うと羨ましかったです。

これだけの魅力を、文章によって余すことなく描ききっていること
それが、この本を通じて感じたさいききょうや先生のすごいポイントだと思います。
例えば……迅人が自分の愛車に久しぶりに触った時のこの描写。


迅人はバイクのフレームに跨り、ハンドルをぎゅっと握り締める。
瞬間、しびれるような感覚が背筋から脳髄に走り抜けた。
心臓がドクンッと脈動する。
両脚の大腿筋がピクピクと痙攣し始めた。
迅人は慌ててハンドルから手を離す。
「俺を、待っていたのか?……でも、ごめんな。もう本気では走れないんだよ」
迅人はそう呟いてから、バイクのメンテナンスを始めた。
(本文40p)



ひとつひとつの文章だけで見ると、言ってしまえば何の変哲もない文章。
なのに、1行目、2行目…と読んでいく度に地層が重なって形成されていくかのように場面が立体的に構築されていくんですよ…!
そうなるとキャラへの移入も一気に高まって、すごくワクワクするんです!!

それにここだけが奇跡的なバランスでそう見えるだけというわけじゃなく、他のシーンでも度々こういうワクワクを感じる描写がありました。
まさにロードバイクの楽しさがふんだんに詰め込まれた1冊と言えるんじゃないでしょうか!



一方、ストーリーは良いところもあり、あれ?と思うところもありという感想ですね。
ロードレースの暗黙の了解が色々と絡んでくるので、私も整理しきれてないのですが…。


この巻であひる達のライバルとして現れるシュリック姉妹。
彼女らの兄が迅人とかつてのチームメイトで、とあるレースで迅人がシュリック兄に優勝を譲らなかったことが原因でシュリック姉妹は迅人に復讐しようとしているんですが…。
「全力で勝負してくれ」と頼んできた相手に全力で勝負して叩きのめした迅人には何の非も無いんですよね…。
”総合優勝を狙う選手はステージ優勝をチームメイトに譲る”という暗黙の了解も、シュリック兄の頼みの時点で無効というか無いも同然になると思うんですが…。
しかも迅人はこれ以前から自らの勝利のために暗黙の了解を無視する選手だったらしいですから、何もこの日が特別ひどかったというわけでも無いですし…。

私が思っている以上に暗黙の了解というものが重いのか、それとも「全力で勝負してくれ」という言葉に「暗黙の了解を守ってくれ」という意味が込められていたのか、はたまたシュリック兄の涙の意味は純粋に負けた事への悔しさでシュリック姉妹の復讐が的外れなものだったのか。
もしかしたら今後明らかになるのかもしれません。



「暗黙の了解を破った迅人に復讐を」というシュリック姉妹が、あひる達とのレース中に暗黙の了解を破って脚技(アクセルアーツ)で直接攻撃してくる展開は最高でした!!
……あ、いや「ざまぁ」とかじゃなくて。

シュリック姉妹が不文律を犯したことに対して迅人が「ふ、ふざけんな!」(本文222p)と叫ぶシーンがなんとも皮肉。
欲を言うならそこに対する迅人の自戒があればなお良かった。


ロードレース(物理)





そこでレースを続けられないほど酷い怪我を負った六華が翌日何事も無かったかのように練習始めようとしていたのは解せんけどなっっ!!!!!!!!




総合的な感想としては、突出して良いところもあればどうしても納得できない場所もあるのでプラマイゼロからややプラス寄り、というところでしょうか。
でも最初にも途中にも書いたとおり、すごく良い描写をする方だと思うので次にも期待したいです!

あ、でも。
少なくとも水着はいらなかったんじゃないかなぁ、と。

(昨今の「唐突なお色気シーンのあるラノベは何なのだ」論争にもつながるのかも)




兎丸ちゃんがうさぴょん可愛い


以上!


ツール・ド・ガールズ!! (講談社ラノベ文庫)
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講談社 (2016-11-02)
売り上げランキング: 17,669

どもー。
デスカイザーです。


冬コミ当選しましたー!

2日目東Q-58a【deskyzerのラノベ日誌】となります!
ブログ名と読みは同じですが表記が違うのでそれだけご注意を。
また近くなってきたら告知記事を上げさせてもらう予定ですー!



では、今日のラノベ!

彼方なる君の笑顔は鏡の向こう

講談社ラノベ文庫より
『彼方なる君の笑顔は鏡の向こう』です。


【あらすじ】

品行方正で容姿端麗、誰もが憧れるような美少女、音和彼方。僕、兎下詩歌の幼馴染みはそう思われている。でもその本性は―僕と二人の時にだけ出てくるのだけれど―とんでもなくだらしない怠け者。不在がちの彼方の親に代わって彼方の世話をするのは僕の役目なのだ。そんな駄目な彼方と、取り壊しが決まった近所の古い神社を見に行ったときに古い鏡に激突。3つに割れてしまった鏡が急に光りだし―突然現れたのは、どこか彼方に似た三人の少女。三人は僕に親しげに話しかけてくる。戸惑う僕に対して彼方はどこかよそよそしい。一体何が起きてるの!?三人の説明では彼方の想いを鏡が反映したらしいのだが―ってことは元は全員彼方!?実力派が贈るちょっと不思議な変則ハーレム・コメディ、開幕!


感想:★★★☆☆

「境界の彼方」なる「鏡界の彼方」
だとかくだらないことを考えてしまいすみませんでしたっ!!


端的に言えば分裂もの。
付喪神と化した鏡を誤って割ってしまったヒロインがその時感じていた3つの感情「郷愁・詩歌を想う心・食欲」を人格化した3人の彼方、それと詩歌に関する記憶を失った彼方を合わせた4人のヒロインとのドタバタ劇です。

食欲ですぜ、食欲!
他の2つに比べて食欲のオリジナリティが光ってます!
しかも出オチとかじゃなく、しなたちゃんだからこそ意味を持つ言葉というのがいくつもあるので余計に輝かしい!

⇒しなたちゃん=「食欲を司る彼方」
同じ原理で「郷愁の彼方」=きなたちゃん
「想う心の彼方」は元の鏡の名・雲外鏡からとって=うなたちゃん

最初は名前の適当さに違和感ありましたが、作品の雰囲気も相まってだんだん馴染んできたのには驚きました…。
ヒロインそれぞれの性格ともマッチしてる感じもありますし、そこまで含めての命名だとしたらすごいですよね…。





この作品はとにかく会話の内容・テンポと、物語全体としてのシリアスさが釣り合わないっ!!

良い意味で!




1つはニヤッとするような発想の飛躍が詰め込まれているので、読んでてとにかく面白い!
プロローグの白雪姫ネタ、

「答えを聞いた僕は自意識こじらせた継母よろしく白雪姫に殺意を抱くだろう。でも本当に殺すと将来に響くので、靴にすりリンゴを流しこむくりで済ますと思う」 (本文7p)

という文章だけでその片鱗を感じ取れると思います。
途中で失速することなく、むしろ加速しながら230ページほどを駆け抜けてるわけですから、面白くないわけがない!


もう1つは、そういった文章の軽薄さが近づいてくるシリアスの足音を完全にシャットアウトしているので、シリアスが急に来たように感じること。
冷静に読み返すとその前からじわじわ来てるのは分かるんだけど、読んでる時はキャラの1セリフで一気に雰囲気が変わったように感じることが多かったです。

やっぱり文章にもメリハリは大事ですね。


ラスト1つは、微妙な釣り合わなさそのものが作品の演出効果として一役買っていること!
納得したとき思わず唸りました…。

詩歌以外の人に対して猫を被っていた彼方、彼方のもとに戻るか戻らないかで意見の食い違う彼方’s、元の彼方がいない生活を受け入れ始める詩歌。
登場キャラのほとんどが、自分の本心を自分の気づかぬままに偽って過ごしていました。
その隠れ蓑がまさしく会話のハイテンションな内容だったのかな、と。
それらを組み立てた結果の歪さが、釣り合わなさとシンクロしているような感じがしました。

鏡を割ったあとの彼方に対して詩歌が抱き続けていた違和感とも「≒」で結ぶことができるので、追体験のような感覚にも浸れました。




で、ですね。

なぜここまで高評価っぽい感想で★×3という微妙な評価なのかといいますと、結末がどうにも納得いかなかったからです…。


しなたちゃん達の気持ちをフッて元の彼方を取り戻すことを選択した詩歌だけども、分裂時の記憶を持ったままもとに戻った彼方の中ではしなたちゃん達の存在があまりにも大きくなっていて…。
本当の家族の形というものに憧れを持っていた彼方にとって、分裂時の騒々しい日常は何物にも代え難いもので…。



ただ、それでもだからといって。
もう1度分裂してハッピーエンド、とはならないですって…。




いくら彼方がそれを望んでも、それ相応の覚悟をもって消滅したしなたちゃん達の気持ちが…。
というか、そんな彼方を支え励ますのが詩歌!お前のこれからの役目だったんじゃないのかっ!!
今すぐにその形を取り戻すことはできなくても、五年後、十年後に、それこそ彼方と結婚して家庭を築いていくなかでそれまでの思い出を塗り替えるような幸せを掴み取っていく!
それじゃダメだったのか…?



きれいな彼方(記憶を失った彼方)はこの選択を気に病むことは無いだろうけど、復活したしなたちゃん達はその選択をさせてしまったことが頭の片隅に残るに決まっているし、詩歌は一瞬結ばれたとはいえ元の彼方を失っているわけだし。



あと最後に一番腑に落ちないのが、「鏡を割るときに考えていた事」がそれぞれの分裂彼方の主感情になってたわけですけど、改めて割ったときにそんなに都合よく再現できるか?というところ。
感情の大きさと破片の大きさのリンクも含めて考えたら、元のしなたちゃん達を戻すことがどれだけ難しいのか…。



逆に、「ハッピーエンドじゃない」と割り切ってしまえば本編の違和感の延長として捉えられるのですが、モノローグとして最後に詩歌が良い事言ってまとめてしまっているのでそういうこともできず…。
「それでも僕は、もう嘆くことはないだろう。」(本文260p)
嘆いてよ…



「彼方と詩歌の在り方」というのが通しのテーマだったと感じましたが、ラスト含めて考えるとすごく複雑ですね…。
お互いに依存しているのに、どこか引いて見てしまっているような。
幸せの方向を向いているのに、深淵を垣間見ているような。


会話は軽快なのに、テーマは重厚。
読んでいる間も、読んだ後も色々な角度から楽しむことができました!
次作も楽しみ!



……あとがきに書かれていた没タイトル『ミラーミラーミラーロストインザラブラブラブラブストーリー』が衝撃的すぎて腹筋がつらいです


以上!

彼方なる君の笑顔は鏡の向こう (講談社ラノベ文庫)
持崎 湯葉
講談社 (2016-09-30)
売り上げランキング: 66,028

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